「舟を編む」三浦しをん著 を読んで
- 4月27日
- 読了時間: 2分
私が特に良いなと思ったのは、主人公の馬締が、なぜ意中の女性と結ばれたのか、という点でした。 私は、それは馬締が「うまく話せる人」だったからではないと思っています。 そうではなく、言葉を通して、人と深くつながりたいと本気で願っていた人だから。 つい、会話が上手な人、気の利いたことを言える人が人とうまくやれる、と思いがち。 ところが、本当に人の心を動かすのは、言葉の上手さよりも、この人は言葉を大事にしている、この人は私との間にあるものを大切に扱ってくれる、という感覚かもしれません。 例の一つとしては、孤独であることを分かり合える。ということ。 私は孤独、あなたも孤独、それ、わかるなぁ。そういう感覚。 馬締には、不器用さはあります。 けれどその不器用さの奥に、言葉を軽く扱わない誠実さがある。 相手に伝わるように考え、相手の言葉もきちんと受け取ろうとする。 私は、そこに人としての深さを感じました。 結局、人と人が結ばれる時に大事なのは、話術ではなく、何を大切にして言葉を使っているか、なのだと思います。 言葉を飾りとして使うのではない、言葉巧みに説得するのでも無い。 そうではなく、つながるために使っている人の言葉は、やはり相手の心に届くのでしょう。 『舟を編む』は辞書づくりの物語ですが、読んでいて感じたのは、これは言葉の話であると同時に、人と人との関係の話でもあるということです。 言葉は、ただ意味を伝えるためだけのものではない。 自分の内側にあるものを相手に渡し、相手の内側にあるものを受け取るためのものでもある。 そんな当たり前でいて、とても大事なことを、この小説は教えてくれました。

